人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 ヴァルクが無言なので、イレーナは慌てて頭を下げて謝罪の言葉を口にした。

「申しわけございません。私はあなたに命じられた薬を飲み忘れてしまったのです。わざとではありません。お許しください。本当に、うっかりしていました。けれど、私はこの子を絶対に諦めたくな……」
「イレーナ!!!」

 ヴァルクは必死に頭を下げるイレーナを抱き寄せた。
 それから深く包み込んで、イレーナの髪をそっと撫でる。

「謝るな。めでたいことだろう」
「ヴァルクさま……?」
「そろそろ、話そうと思っていたんだ」
「……何を、でしょうか?」

 ヴァルクは一度離れ、イレーナに笑みを向けた。

「俺の子を産んでほしいと」

 今度はイレーナが驚き、絶句した。
 目を見開いてじっと見つめるイレーナの顔をヴァルクが撫でる。

「お前も正妃になったことだ。本気で考えねばならないと思うようになった。だが、お前の身体は回復したばかりでそのような負担を強いるのは時期尚早ではないかと思ってまだ話さなかった」



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