人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
ヴァルクはゆっくりと視線を下に向けて、ぼそりと言った。
「そうか。俺の子がいるのか。それは、すごいことだ」
「はい、そうです。すごいことですよ。皇子か皇女がいるのです」
ヴァルクはふたたびイレーナを抱きしめて、優しく呟く。
「皇女がよいな。お前に似て可愛らしく美しいのだろう。思いっきり甘やかしてやるぞ」
「もう。ヴァルクさま、気が早いですわ」
「皇子なら忙しくなるぞ。俺は教えるべきことが多くあるからな」
「そうですね。でも、私はどちらでもいいと思っています。無事に生まれてきてくれれば十分ですわ」
イレーナはそう言ったあと、少し戸惑ってしまった。
一般的な平民であればそれはそうだが、皇帝の子だ。
そういうわけにもいかない。
「申しわけございません。妃の立場として無責任なことを申しました」
「いいや。そのとおりだ。まだ見ぬ子のことなど神にしかわからない。無事に生まれてくれればよい」
イレーナはほろりと涙をこぼし、ヴァルクの胸にぎゅっと抱きついた。
「ところで、あの……」
「どうした? まだ何か訊きたいことがあるのか?」
「ええっと……今後のことなのですが」
「何だ? 遠慮なく申せ。お前は俺の妻だぞ」
イレーナは覚悟を持って気持ちを伝えてみることにした。
「では申し上げます。私があなたのお相手ができないときは、側妃を迎えられますか?」