人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
「このお布団にガチョウが使われているなら、それに似ている鳥で作るのです。そうですね、たとえばアヒルとか!」
「お前は何を言っているんだ?」
「私は以前、本で読んだことがあるのですが、ガチョウとアヒルは似ているのです。アヒルならより安価で生産できると思うので、少し劣りますが民でも買える値段で売り出すことができるのではないでしょうか?」
目をキラキラさせながら話すイレーナに対し、ヴァルクは真顔だ。
イレーナは笑顔のまま固まってしまう。
(初夜に商売の話をする女ってどうなのよーっ!)
言葉に詰まって硬直しているイレーナに、ヴァルクは冷静に訊ねる。
「お前は商人か?」
「ち、違います。えっと、貧乏だったのでつい節約術のことばかり考えてしまい……」
「ふむ、なるほど。さっそく商人ギルドに伝えるようテリーに言いつけておこう」
「本当でございますか?」
イレーナはぽかんと口を開けて驚愕した。
まさか、小娘の戯言を聞き入れてくれるとは思わなかったのである。
ヴァルクはにやりと笑う。
「やはり思ったとおりの女だ。面白い」
「え? それはどういう……?」
まるで以前からイレーナのことを知っているかのような口ぶりだ。
しかし、それはないだろう。
ヴァルクがカザル公国を訪れたことも、父との接点さえも、まったくなかったのだから。