人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
「これはマタギ草の薬でございます」
「マタギ草? 虫刺されに効くの?」
「違います。これは避妊薬です」
胸を張って堂々と言い放つリアを見て、イレーナは呆気にとられ、ぽかんと口を開けたまま固まった。
(え、待って……昨夜子作りをしたわよね? どうして避妊するの? 意味なくない?)
理解不能という表情のイレーナに、リアが満面の笑みで付け加える。
「陛下がイレーナさまを大変気に入られたようで、長く楽しみたいということでございます」
リアの背後で使用人たちが「きゃあっ」となぜか歓喜の声を上げた。
イレーナは表情を引きつらせながら
「えーっと……それは、つまり」
すぐに妊娠すると楽しめないからしばらく避妊しろということなのだろう。
つまるところ、イレーナは皇帝の子を産むための妃ではなく、皇帝の欲求を晴らすための妃となったわけだ。
昨夜のような行為をこれからもずっと続けていかなければならないのか。
イレーナは眩暈がした。しかし同時に喜びの感情がわいてきたことも否めない。
(だって、結構、よかったんだもん♡)