人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 司祭の表情がわずかに緩む。
 怒りに満ちていた雰囲気が、少し和らいだのをイレーナは悟った。
 この機会を逃すかとばかりにヴァルクが突然、寄付金額の提案をしてきた。

帝国側(われわれ)はこの村の再建のために10億ドルガ用意しよう」
「んなっ……!」

 司祭は口をあんぐり開けて絶句した。
 それもそのはず、それだけの財があれば学校や病院が建てられるし、図書館や劇場などの娯楽施設も建設できる。

(お金が大好きな司祭さまに明確な金額を提示する。たしかに説得力があるわね)

 ヴァルクは子どもたちの話を利用したのだろう。
 扉の向こうで子どもたちが驚きながらお互いにひそひそ話している。
 司祭は「ぐぬうっ」と唸り声を発し、しばし考え込んでいたが、やがて顔を上げてヴァルクに訊ねた。

「このことを、皇帝は許しているのか?」
「皇帝自らの望みだ」
「その言葉は真実(まこと)であろうな? 我々の先祖には帝国側に騙された者たちも多い」
「新しい皇帝は嘘が嫌いだ」

 司祭は渋い顔つきでヴァルクに疑いの目を向ける。
 ヴァルクは明るい表情でしっかり司祭を見つめている。

(どうやら流れを掴んだようね)


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