人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
しかし、司祭はそう簡単には納得しない。
彼はなおも疑いの目をヴァルクに向けている。
「そちらにとって何かメリットがあるはずだ。そうでなければ、いくら子どものためとは言え、善意だけでその額を出せるはずがない」
ヴァルクは表情変えず、笑みを浮かべたまま素直に返す。
「ご名答。この村は実質、無法地帯。豊かな町にする代わりに帝国騎士の詰所を置かせてもらう」
「なっ……それでは帝国に跪けと言っているようなもん……」
「悪いようにはせん。帝国のものになれ」
「このやろーっ!」
怒気を含んだ睨みを利かせる司祭に対し、余裕の笑みを浮かべるヴァルク。
だが、イレーナは頭を抱えた。
(この人はオブラートに包むことができないのかしら)
しかし、イレーナにはヴァルクの思惑がわかる。
ただでさえ周辺国は敵だらけなのだ。
味方はひとつでも多くあっていいし、そもそも国内に敵がいるという状況にヴァルクが耐えられないのだろう。
今までの皇帝はただ戦争をしていればいいという考えだったので、教会のことなど眼中になかった。
しかし、ヴァルクはどうやら違うようだ。
(本当に、噂なんて嘘ばかりね)
ヴァルクは冷酷非道でも何でもなく、ただこの国を立て直し、正常へ導こうとしているだけ。
しかし、あまりに率直で不器用なので、相手に真意が伝わらないのである。
(さて、どうしようかしら?)