今はまだ、折れた翼でも
そして翼が中学三年生、俺が中学一年生、流星が小学六年生のころだった。


翼は、いじめを受けていたんだ。

でもクラスメイトとかではなく、学校の不良グループから。

みんなに分け隔てなく明るく接する翼は、慣れあうことを嫌う不良たちからは真逆の存在だった。だから、標的にされたんだと思う。

俺はそのことを知らなかった。同じ学校に通っておきながら。


中三の先輩がやられているらしいといううわさはかすかに耳にはしていたが、それがまさか翼だなんて思いもしなかった。

家でも変わらず当たり前のように明るくて、元気だったから。


頭のいい翼は、よく俺に勉強を教えてくれていた。

休日は、知らないどこかに連れて行ってくれる。すごく景色のいい場所だったり、「にーちゃんの秘密の場所なんだ」と言って小学校裏にある小さな丘の上の大きな木の穴のときもあった。

まるで、生えている翼にに乗っかっているような気分。

俺にとって翼は、どこまでも頼りがいのある強い人だった。


< 137 / 198 >

この作品をシェア

pagetop