今はまだ、折れた翼でも
……そういえば、ここって、あそこに近い。

“あそこ”というのは、あの秘密の原っぱのこと。


そういえば今の時期なら、ひまわりが結構咲いてるかもしれない。

家には帰ることは出来ないけど、少し休憩くらいなら。

私はそのまま方向を変えずにゆっくりと歩く。


10分くらい歩くと、見えてきた。

まるでお城みたいな洋風なお屋敷が目印。その裏にあの原っぱを覆う森がある。

私は風で飛びそうなカーディガンを手で押さえながら木の間をかけ分けて歩いた。


この辺の道は、三年通い続けていて勝手に出来て行ったもの。

でも整備をしていないから木の枝が伸び放題なんだけれど。


私は服が例の木の枝に引っ掛かりそうになるのを取る。

すると、やっと開けた場所に出た。

いつもの、原っぱだ。

ううん。いつものじゃない。


背の高いひまわりが、まるで迷路のようにたくさん咲いていた。


その眺めを堪能するように見回すと、上半身がひまわりの陰に隠れて見えないけど、奥のほうに誰かいることに気が付いた。

今までここに誰かがいたことって、なかったのに。


数秒ぐらい考えて、あっと思った。

あれは、もしかして。

……もし、違っていたら。ううん、違っていてもいい。



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