浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
そうと決まれば、即実行に移すべき。 単純な私は麗華に背中を押されて、桜川病院へ偵察に行くことになったのだ。

子どもたちは幼稚園に送り届けてあり、もうマンションにはいない。

ファッションは、いつもと変わらないようにして。
今流行っているらしい小さめのバッグに財布とスマホを詰め込むと、私は玄関でスニーカーを履いた。

朝、幼稚園に子どもたちを送り届けたときは小雨だった雨が、今は本降りになっている。

『今から病院に向かいます』と麗華にメッセージを送信し、家を出た。


* * *

「あれ? 桜川さん、こんにちは。 どうされたんですか?」


望さんの秘書室の近くまで来たとき、背後から声をかけられた。

驚いて振り向くと、今望さんの秘書として働いている水瀬さんがたくさんの書類を抱えたまま立っている。

水瀬さんは、いわば私の後継ぎ。
ピチピチの25歳で、ブラウンがかった長い髪を、お団子ヘアにしているのが特徴的な子だ。


「桜川先生にご用件ですよね?」

「え……うん、まぁ…そんなとこかな?」

「今、まだオペから戻られていなくて。 もうすぐ、2件目のオペが終わると思うので」


そういえば、そんな話をしていたかもしれない。
顔を合わすことが少ないとはいえ、当然、夫のスケジュールくらいは知っている。
< 113 / 142 >

この作品をシェア

pagetop