浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
いきなりのことにも関わらず、しだいに身体中が熱くなるのがわかった。


「このまま、水姫が欲しい……」


甘い、桜川先生の囁き。
どことなく恥ずかしそうにしている桜川先生に、きゅっと胸が締め付けられた。

初めて見る、桜川先生の表情。

いつもは真剣な顔で外来をしているのに……こんな表情もするんだ。


ーーーなんだか、とても愛おしい。


「水姫、抱いても……いい?」

「……はい」


小さく、首を縦に振る。

つい先日彼氏と別れたのに、軽い女だって思われてしまうかもしれない。

一瞬そんな考えが脳裏を過ったが、再び重なった唇に、もう思考回路は停止。
両腕を桜川先生の首に回し、ぎゅっと抱き付いた。

それに応えてくれるかのように、私を抱きしめてくれる桜川先生。


「桜川、せんせ……私っ…」

「名前で呼んでよ、水姫」

「望さん……」


甘い快楽の中そう呼ぶと、とても嬉しそうな表情で私を見つめてくれる桜川先生。

患者さんや、ほかの職員には今までに見せたことのない優しい瞳に、吸い込まれてしまいそうになる。


「水姫、絶対幸せにするから」


……大丈夫。
桜川先生なら信用できる。


でも、この幸せが一瞬にして消えてしまうことになるなんて。
このときは、誰も想像していなかったーーー。
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