浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】

side.望

まさか、この俺が片思いをすることになるなんて。


あの日からずっと、水姫が欲しかった。
いつも仕事熱心で花のような笑顔を見せてくれる彼女は、いつも輝いて見えた。

そんな彼女を好きになるのにそう時間は掛からず、出来れば秘書としてではなく人生のパートナーとして傍にいて欲しかったが、そう簡単には行かない。


彼女には現在付き合っている男性がいるのを、俺は知っていたから。


別に探りを入れたわけではなく、たまたま街中を2人で歩いているのを見かけてしまった。

もっと早く交際を申し込むべきであったと後悔したが、当時仕事の忙しさに追われていた俺には、好きな女性を口説く時間ですらなかった。

そんな中でも医院長である父親から縁談を持ち込まれることは多々あり、ただでさえ少ない自分の時間を割いてまで会食をしたことはあったが、水姫以上の女性は現れなかった。


「お父様、しばらく縁談の話は控えていただけませんか? 今は、仕事に集中したい時期ですので」


仕事の忙しさを口実にやんわりと縁談を断ると、父は渋々了承し、縁談を持ち掛けることはなくなった。

水姫は秘書で、どこかの社長令嬢とか医者の娘とかいうのではなく、ごくごく普通の女性だ。
決して自分を飾ることなく、俺と接してくれる水姫に惹かれたのだ。
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