偽る恋のはじめかた
今時の若者は分からない。
2つしか年齢が変わらないのに、黒須君がすごく遠くに感じた。このおいてけぼりの感情をどこに持っていこうか・・・・・・。
トボトボと重い足取りで自分のデスクへと戻る。
隣の黒須君のデスクをちらっと覗いてみると、パソコンもシャットダウンされていて、定時で帰ったのは間違いなさそうだ。
・・・・・・私も帰ろう。
デスクの上を整理して、帰る準備を始めた。
黒須君のことは・・・・・・、一旦忘れよう。
私の脳の処理能力を上回ってしまうので、これ以上は考えるのをやめた。
「あっ、いたいた!皐月、今日一緒に帰らない?」
「あっ、う、ん・・・・・・」
私を探していた様子の梨花に誘われた。歯切れが悪かったのは、黒須君との一件を引きずっているからだ。
「・・・・・・なにかあった?顔引き攣ってるけど」
「えっと」
黒須君に好きとか言われて返事する前に『定時なんで帰ります』とか言われて、私の方がおいてけぼりくらった感じなんですけど!
・・・・・・と、言いたくて仕方なかったが、まだ残っている他の社員もいたので、なんとか堪えた。
「・・・・・・ご飯食べて帰ろうか」
「いつも行くお店でいいよね?」
「うん」