偽る恋のはじめかた


今時の若者は分からない。
2つしか年齢が変わらないのに、黒須君がすごく遠くに感じた。このおいてけぼりの感情をどこに持っていこうか・・・・・・。


トボトボと重い足取りで自分のデスクへと戻る。
隣の黒須君のデスクをちらっと覗いてみると、パソコンもシャットダウンされていて、定時で帰ったのは間違いなさそうだ。

・・・・・・私も帰ろう。
デスクの上を整理して、帰る準備を始めた。


黒須君のことは・・・・・・、一旦忘れよう。
私の脳の処理能力を上回ってしまうので、これ以上は考えるのをやめた。






「あっ、いたいた!皐月(さつき)、今日一緒に帰らない?」

「あっ、う、ん・・・・・・」




私を探していた様子の梨花に誘われた。歯切れが悪かったのは、黒須君との一件を引きずっているからだ。



「・・・・・・なにかあった?顔引き攣ってるけど」

「えっと」



黒須君に好きとか言われて返事する前に『定時なんで帰ります』とか言われて、私の方がおいてけぼりくらった感じなんですけど!

・・・・・・と、言いたくて仕方なかったが、まだ残っている他の社員もいたので、なんとか堪えた。



「・・・・・・ご飯食べて帰ろうか」


「いつも行くお店でいいよね?」

「うん」

< 114 / 261 >

この作品をシェア

pagetop