偽る恋のはじめかた
仕事を終えて2人でよく行く居酒屋に入った。
酒場というよりカフェみたいな、お洒落なお店で、若い女性のお客さんが多い。
居酒屋特有のガヤガヤとした賑わいが少なくて穏やかな時間が流れる。ゆっくりと過ごせるので、私達のお気に入りのお店だった。
お腹を満たすために、唐揚げなどおつまみを数品と、私はビール。梨花はジントニックを注文する。
私は迷っていた。梨花に自分の今の気持ちを正直に話すべきか、桐生課長の恋を応援するべく内緒にしておくべきか・・・・・・。
どうするべきかを考えていると、
心の奥底で黒い感情が渦巻く。
必死に抑えようと足掻いても、
一つの感情が強く主張してくる。
———桐生課長を、取られたくない。
自分の欲望が、もう隠せないところまで来ていた。