偽る恋のはじめかた
それからの桐生課長はおかしかった。
正しくいうと、いつもおかしいけれど
・・・・・・いつも以上におかしかった。
「君たち・・・・・・距離が違くないか?」
「…へ?なにがですか?」
黒須くんと資料の確認をしていると、離れた場所から詰め寄ってきた。
桐生課長の言葉の意味を考えて固まっていると、さらに大きめの声で言葉が放たれた。
「近いっ!!近い近い近い———!!!!」
「…もうっ!なんですか?」
「ただ、一緒にこの資料の確認してるだけなんすけど?」
私と黒須くんは、一つの資料をただ一緒に覗き込んでいるだけだった。肩も触れ合っていないし、特別距離が近いわけではない。ただ隣にいるというだけだ。