偽る恋のはじめかた
「ちょ、ちょっと待ってください。なんで桐生課長がお金出すんですか?」
「……いや、椎名さんの分を黒須くんに払わせるのは、なんか…なんというか……嫌なんだよな」
「……いや、桐生課長に払ってもらうわけにもいかないですよ」
「…そう、か。でもな、嫌なんだよな、だから、俺が出す!」
「いや、おかしいですから!私は桐生課長のなんでもないんですから」
なぜかお金を払いたい桐生課長と、払ってもらう理由が見当たらない私は押し問答を繰り広げている。
そんな私たちを横目に、黒須くんはあっさりと、千円札を受け取った。
「…ラッキー!部下の分出してくれるんすか?椎名さん桐生課長のご厚意に甘えて、この浮いたお金で、今度は違うお店のランチ行こうよ」
「それはダメだ!!二人きりはだめだ!!」
「は?!」
桐生課長は、なんだか怒っているように見えた。
わけがわからず戸惑っていいると、お昼休憩を終えた他の同僚が帰ってきた。
「……」
「……」
自然と私たちの会話も終了となり、それぞれのデスクに戻っていく。