偽る恋のはじめかた
「そんなことで悩んでたんすか?」
「そんなことって・・・・・・最近は朝方3時まで考えていたよ。こんな男最低だなって」
そう真剣に吐き捨てた桐生課長の言葉は、嘘ではなさそうだ。よく見ると目の下にはクマができている。
「思い続けた時間で『好き』を測ってたら、目の前の『好き』を見落としますよ?…俺なんて、1分もあれば好きになれますけど?」
「……それは早すぎじゃないか?」
「桐生課長は固すぎっすよ」
「……」
「まだ、悩むなら、俺が椎名さんもらいますけど?」
「それはだめだっ!!!」
俺の言葉に食い気味で答えた桐生課長。
答えは出たようにすっきりとした顔をしている。
俺はなにをやってるんだろう。
椎名さんのことが好きなのに、桐生課長の背中を押して・・・・・・なんで、恋のキューピットなんてやってんだよ。