偽る恋のはじめかた




「俺と付き合ってください」

「……はい」

「……はあ、よかった」

「私の方が……ずっと想ってました」

「なんだよ、それ、本当?」

「……偽ってない桐生課長に、惚れちゃったんですよ」

「……はあ、ずるっ」

「え、どういう意味……」


私が言い終える前に、今度は正面から、ぎゅっと抱きしめられる。顔は首元に埋められて、吐息が首元と心もくすぐってくる。


「……っ」

顔が離れたと思った次の瞬間には、唇が奪われた。一度触れただけで離れた唇は、またすぐに私の唇に吸い付く。


「……桐生課長っ、……掃除だけで、なにもしないって、」

「そんなわけないだろ」

唇が離れた一瞬の隙で、なんとか言葉を発すると、甘く低い声と共にまた塞がれる。


「……聞いて……ない、ですよっ?」

「言ったら部屋に上げないだろ?」



いきなり零れる男の色気と、唇が触れ合うたびに心がどよめいて、私の理性が追い付かない。


私が喋ろうとすると、その言葉を閉ざすように口を塞がれる。まだ玄関から一歩も部屋に踏み入れていないのに、その行為が止まろうとはしない。


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