偽る恋のはじめかた
「はあ———」
私はここ最近で一番大きいため息をついた。
関わりたくないけど、誰かが教えてあげないと、間違えた俺様上司を演じて、部署のみんなに迷惑を掛けてしまう。
「私が手伝いますよ。俺様上司になるのを・・・・」
「本当に?!ありがとう!」
桐生課長は喜びを身体いっぱいに表して、私の両手を握りブンブン振っている。
「ただし、桐生課長が演じてる今の俺様上司は全然ダメです。もはや間違えてます。嫌われます。
私が女にモテる俺様上司を指導しますから!」
勢いでこの桐生課長を俺様上司になるのを手伝うなんて言ってしまった。
口角を上げて満足そうな表情をする桐生課長を見て、この人に指導なんて出来るのかな。と不安が押し寄せてきた。そして、引き受けたことを既に後悔していた。