偽る恋のはじめかた
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「さーちゃん、この数字は……」
「「さーちゃん?!」」
「……あ、やべっ、」
呆気なくみんなにバレてしまうのは、内緒にしようと決意表明した数日後の話。
桐生課長が、会社でもさーちゃん呼びをしたせいで容易くバレてしまった。
心配のタネだった白井さんはというと、敵意剥き出しの視線は最初だけで、時間が経つと全くと言っていいほどなくなった。どうやら、他部署の若手エースの社員に狙いを定めたらしい。
意図せずみんなにバレてしまったおかげで、嫉妬心に惑わされることもなくなった。
驚く社員も多かったが、祝福の声がたくさん降り注いだので驚いた。同時に冷やかしの声は絶えず、少し気恥ずかしい日々を送ることとなる。
ただ、その冷やかしも温かさが感じられるので、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
社員との壁があった桐生課長は、この一件で壁はなくなり、本当の性格が表に出た桐生課長は人気が爆上がりした。
私だけが知っていた、本当の桐生課長がみんなに知れ渡って、少しだけ寂しい気持ちが芽生えたのは、私だけの秘密にすることにした。