偽る恋のはじめかた





「さーちゃん、ごっ、ごめん。バレてしまった」

「遅かれ早かれ、やらかすと思ってましたよ」

「さーちゃん、怒ってる?」

「はあ、」

「……そりゃ、怒ってるよな、ごめん」

「今の溜息は……、全く怒りが湧いてこない自分への溜息です」

「え、」

「残念なところさえも、なんでこんなに好きなんだろ?」

「さーちゃん、」

「……これ以上、他の女子社員に好かれるの禁止です」

「わかった、さーちゃん以外の女子社員には嫌われる努力をするよ」


き、嫌われる努力……?!

真面目な顔でとんでもないことを言い放つ。
その表情は真剣で、本気で言ってることが伝わってくる。


「え、いや、なにもそこまで……嫌われる努力はしなくていいですからね?」



桐生課長は考えることが極端すぎるよ……。
いくら一緒にいても、彼の真面目さ故の思考回路には毎度驚かされる。

< 260 / 261 >

この作品をシェア

pagetop