夕陽を映すあなたの瞳
第十八章 結婚式と娘の名前?
年が明け、待ちに待った桑田と沙良の結婚式の日がやって来た。

有休を取った心は、朝からワクワク、ソワソワと準備する。

ショーチームのメンバー全員が仕事を休む訳にはいかないが、冬季のスケジュールで、この日の閉園は17時。

そして桑田は、職場の全員が出席出来るよう、披露宴を遅めの19時からに設定してくれていた。

心は一足早く、17時からの挙式にも参列する。

会場のホテルに着くと、同じく有休を取った佐伯を見つけ、互いにギャーと驚きの声を上げる。

「く、久住!お前、女子みたいだぞ。男じゃなかったんだな」
「何を言ってるんですか?!佐伯さんこそ、服着てるのなんて、初めて見ました」
「バカ!それじゃあ俺が裸族みたいだろ」

ヤイヤイ言いながら、ホテルのスタッフに案内されてチャペルに入る。

「ちょ、ちょっと佐伯さん。どうしよう、この雰囲気。緊張するんですけど…」
「安心しろ。誰もお前のことなんて見てないから」
「そりゃそうですけど」

ヒソヒソ話していると、やがて時間となり、心は姿勢を正して後方の扉に注目する。

ゆっくりと扉が開き、グレーのタキシードに身を包んだ桑田が現れた。

「ヒャーーー!!かっこいい!桑田さんですよ、あの人、桑田さんですって!」
「分かってるよ!痛いから腕掴むな!こら、落ち着け!叩くなっての!」

心は隣の佐伯の腕をつまんだり叩いたり、興奮して桑田を凝視する。

そんな心の前を、ゆっくり堂々と歩いていく桑田は、まるでどこかの国の王子様のようだ。

「信じられない、あの桑田さんが…。いつも包丁片手に睨みを利かせているあの桑田さんが…」
「バカ!久住、語弊がありすぎだろ」

佐伯が慌てて心の口を塞ごうとすると、二人の前を通り過ぎざま、桑田がジロリと心を睨んだ。

「あ…、やっぱり桑田さんだ」

途端に心はおとなしくなる。
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