夕陽を映すあなたの瞳
桑田が祭壇の前に到着すると、オルガンの演奏が一層大きくなり、新婦が父親と共に入場する。

扉が開いた瞬間、そこにいる誰もが新婦の美しさに息を呑んだ。

「な、なんて綺麗なの、沙良さん」
「嘘だろ?桑田さん、あんな美人なお嫁さんもらえたのか?」

初めて沙良を見る佐伯は、もはや呆然としている。

「ど、どうやったらこんな綺麗な奥さんを?あの鬼の桑田さんが?」

そんな佐伯の横で、心はボタボタと涙をこぼす。

「ううう、綺麗。沙良さん、良かった。本当に良かった。8年かけてようやくこの日を…」

嗚咽を漏らしながらハンカチで目頭を押さえる心に、沙良はにっこり微笑んで通り過ぎる。

「わあー、なんて素敵な笑顔なんだ」
「佐伯さん、何を勘違いしてるんですか。桑田さんの奥さんですよ?手を出したらどうなるか…」

すると佐伯は真顔で首を振る。

「しない。俺、絶対そんなことしないぞ。命が大事だからな」
「そうですよ」

そして厳かに式が執り行われる。

誓いの言葉、指輪の交換、心はその1つ1つを涙ぐみながら見つめる。

やがて桑田が沙良のベールをそっと上げ、二人は微笑んで見つめ合った。

「いやーん、素敵!ときめいちゃう」
「痛いっつーの!いちいち俺の腕を掴むな!」

心と佐伯が小競り合いをする中、桑田と沙良はゆっくりと唇を重ねた。

(ヒャーーーー!!)

声にならない声を上げて、心は佐伯の腕をつねる。

(ヒーーーーー!!)

佐伯も息を詰めて痛みに耐える。

そんな手に汗握る展開の挙式は、ようやく二人の退場シーンとなる。

心は、幸せそうに腕を組んで歩いてくる二人に、笑顔でフラワーシャワーを浴びせた。
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