夕陽を映すあなたの瞳
「はあー、マジで痛かった」

挙式のあと、披露宴会場の待ち合いスペースで、佐伯はグッタリとソファにもたれる。

「いやー、感動的でしたね!私もう、涙腺崩壊でしたよ」
「お前なあ、涙腺崩壊は俺の方だぞ。自分の馬鹿力を自覚しろっつーの!」
「まあまあ、いいじゃないですか。あんなに素敵な挙式に立ち会えたんですよ。はあー、もううっとり」
「なにがうっとりだ。うっとりするヤツが、人の腕つねり上げるか?わっ!ほら見ろ!青くなってる」

佐伯が袖をまくって見せる。

「うわー、痛そう…」
「だからお前のせいだっつーの!!」
「ごめんなさーい。お詫びにドリンクごちそうしますよ。待っててくださいね」
「なにがごちそうだ!サービスドリンクだろうが!」

背中に佐伯の声を聞きながら、心はカウンターに行きジュースを受け取る。

すると、
「お、久住か?!うわー、化けたなお前」
仕事を終えた同僚達が次々とやって来た。

皆、普段の作業服姿とは違い、初めて見る正装に互いに驚く。

「挙式、とっても感動的でしたよー。桑田さんもかっこよくて、奥様なんて、超お綺麗で。ね?佐伯さん」
「ね?じゃねーよ!まったく…。こっちは痛みに耐えるのに必死で、ちっとも感動出来なかったんだからな」
「まあまあ、そうおっしゃらずに。みんなで写真撮りましょうよー」
「俺、披露宴は絶対お前の隣に座らんからな!」

プンプン言いながらも、写真を撮る瞬間だけは、にっこり笑う佐伯だった。
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