世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「てゆうかさ、梅子さんと心奈になんで同じ都市開発の見積させてんだよ?」

「……あら、源課長は公私混同してるのかしら?」

由紀恵は顔色一つ変えない。

「違う、たまたま両方と会った時に同じような図面がチラッとみえたから、カマかけた。で?なんで?何が狙い?俺関係だよね?」

「相変わらず察しがいいのね。でもいまは言えないわ。そのうち分かるから……ちなみに心奈さんと花田社長との会食が近くあるかも」

「だから俺は心奈とは結婚できないって言ってるよな!婚約すら無理だからっ」

「あなたがそう思ってても源課長の気が変わるかもしれない」

「え?」

由紀恵が経済新聞片手にふっと鼻で笑う。
その顔に嫌な考えが頭をよぎる。

「どういうことだよ……まさかアンタ、俺を《《餌》》にしてんじゃねぇよな?」

「さあね。お手並み拝見」

俺に睨まれても気にと留めず、由紀恵が運ばれてきた朝食のパンにバターを塗りながらグラスを傾ける。

「なぁ、酒もやめてくれって言ったよな?肝臓数値悪いだろっ」

由紀恵は過度の飲酒で肝臓の数値が悪いと俺の母である香奈恵から聞いたことがあった。女の身でTONTONの社長としてトップに立つ重圧とストレスから由紀恵は酒がやめられない。

「時差ボケね、ロスではいま夜だから。夜はワインを飲んでからじゃないと……眠れないから」

その言葉に俺は口を閉ざした。

(未だに眠れないのかよ……)

由紀恵は香奈恵が事故で亡くなってから長らく不眠症を患っている。夜寝る前にお酒の力を借りてからじゃないと数時間さえもろくに眠れないと俺に話したことがあった。

「もう十年ね……」

両親が亡くなってもう十年。由紀恵が俺の後見人になってもう十年。そう考えれば、俺は両親と過ごした時間と同じほどの時間を由紀恵と過ごしていることになる。

「あぁ」

俺は由紀恵の「もう」が両方の意味を示していることを悟るとそれだけ返事した。

「……私もあと何年持つかしらね……世界、早く大人になりなさい」

俺は一瞬だけ由紀恵を見てから黙ってフォークを持ち上げた。
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