世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
──「どうぞ」
由紀恵の温度のない声が聞こえてきてから私は「失礼致します」と返事をしてから社長室に入る。
すでに心奈は社長の真向かいにデスクを挟んで立っていた。私も直ぐに心奈の隣に並ぶ。
「源課長おはようございますー」
心奈は勝利を確信しているのだろう。こちらを見ながらグロスの塗られたピンクの唇を引き上げた。
(まだ分からないんだから……)
あれから私は一から図面を見ながら見積作成を行った。もう何度も見ている見積りであるいうこと、さらに一から作成し直したことで心奈に消去されたものより良い見積りを作成することができた。自信がないわけじゃない。
「おはよう」
私はそれだけ返すと直ぐに、心奈から由紀子へと視線を移した。
「二人とも、この三週間、業務の傍ら真摯に見積りに向き合ってくれてお疲れ様でした。今日朝から二時間かけて両方の見積りを隅から隅まで拝見させていただきました。正直言ってレベルが高くて驚いたわ」
由紀恵が革張りの椅子の上で足を組みなおすと、ふっと笑った。
「お二方ともそんなに緊張しなくても……ちなみに繰り返しになるけど、この見積対決の勝者が世界と交際する権利及び……婚約者として認めます」
(え?婚約者?)
「いいわね、心奈さん?もしあなたが負けたら世界との婚約は破棄、でも都市開発はこのまま続行よ」
「わかっています」
心奈が横目で私を睨みながら返事をした。
「源課長、もしあなたが負けたら、世界とは別れてもらう。世界を説得できずにちゃんと別れられない時は、どこかへの支店へ異動してもらう」
「え……異動って」
由紀子があきれたように笑う。
「世界はあなたにご執心のようだから……顔を合わせない方がいいと思うの。いいかしら?」
「……承知いたしました」
緊張からもう喉がカラカラだ。こうして異動の話までされるということはやはり出来レースなのだろうか。私は震えてきそうな両足にぐっと力を込めた。