世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
世界が眠ってしまってから、私はキッチンで久しぶりにおかゆを作っていた。私も滅多に風邪を引かない。おかゆを作ったのは久しぶりだ。

「うん、美味しい?よね?…」

私はお鍋の中の梅干しのおかゆを味見するとお玉をおいた。

(世界くん起きたかな……)

寝室をそっと覗けば、ベッドでは氷枕に冷えぴたをおでこに張り付けた世界が綺麗な顔をして眠っている。

(相変わらず可愛くて綺麗な寝顔だな)

世界がこの部屋にいることも、手を伸ばせばすぐに届く距離にいることも、昨日重なった夜のこともまだ実感が沸かない。まして世界が、あの時の男の子だったなんて未だに信じられない。

「運命……だね」

この世に運命なんてどこかであるわけないと思っていた。特に恋愛においては心から誰かを愛してしまうほどのご縁なんて、もう一生ないのかと諦めていた。


(愛おしいな……)

わがままで、勝気で、口が悪くて子供っぽくて、でも誰よりも私のことを真っすぐに見つめて嘘偽りなく愛してくれる。いままで年の差に拘っていたのが今更ながらバカらしくなってくる。

心にカタチがないように恋にもいろんなカタチがあっていい。もう私はきっとどこへもいけない。世界が心に棲みついて噛みついて離れないから。

「好きだよ……」

私はそっと世界の頬に触れた。先ほどまで三十八度超えていた熱は、解熱剤のおかげか若さなのか微熱程度までにさがったようだ。

「……良かった……熱さがったね」

「ん……梅子……さ?」

私の声に反応するように世界の長いまつ毛が上を向いた。

「あ、ごめん……起こしちゃった?」

「ううん、今目が覚めた……何時?」

「えっと」

私は壁掛け時計を見つめた。

「あ。十四時かな」

「そっか……ごめん」

「え?どうしたの?」

「今日梅子さんの誕生日なのにどこにも連れていってあげられないし、プレゼントも用意してないし……俺のせいで」

世界が叱られた子供みたいな顔をしてぎゅっと抱きしめたくなる。私は心のままに手を伸ばして世界の背中を抱きしめた。

「梅子、さん?」

「プレゼントもう貰ったから」

「え?」

「世界くんのとなり」

「となり?」

「世界くんと一緒にいられたら、それだけでいいの。なんにも要らない。だから……世界くんのとなりにずっといさせて?世界くんのとなりの席だけは他のだれにもあげないで」

世界が私から体を離すと真っすぐに私を見つめる。

「そんなプレゼントでよければあげる。なんなら俺が持ってるモノ全部あげる。その代わり、一生俺に噛まれるよ?」

「え?……わっ」

世界が意地悪く笑うと冷えピタを放り投げて、私をベッドに縫い付けた。

「噛んでいい?」

「いいよ……あの、優しく噛んでね」 

世界がすぐに前髪をくしゃっと握ると口を尖らせた。

「もうー……だからさ、それ反則だって」

私達は顔を見合わせると暫く笑いあってから長い甘いキスを重ねた。
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