世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「陶山社長、パパとのあの話、世界にしてもらってもいいですか?」

(あの話……?)

心奈が上機嫌な時は特に話がややこしいことが多い。さらには今回は俺と心奈の結婚の話についてだ。今までは俺たちのことは心奈の父とボスの間で勝手に決めた許嫁ということで曖昧にしてきたが、正式に婚約となると重みがまるで違う。

(心奈と結婚なんてしてたまるか)

由紀恵は短くなったタバコの火を消すと、デスクから書類の束を取り出した。

「そうね、その話をすれば世界もきっと分かってくれるわね」

「おい、二人して何考えてんのかわかんないしどうでもいいけど、俺、真剣に付き合ってる人いるから」

「えっ!世界どうゆうことなのっ!誰なのっ!」

心奈が大きな瞳を見開くと俺を見上げながら、すぐにネイルの施された綺麗な手で俺の胸元をきつく握りしめた。

「痛ぇな。心奈、離せよっ」

睨む俺から心奈は視線を外さない。俺は無理やり心奈の腕を掴むと強引に引き離した。

「世界、お相手はどなたかしら?」

先ほどよりワントーン下がった声色で由紀恵が訊ねる。
俺は下唇を湿らせた。

「同じ会社で上司の……見積課の源梅子さんです。以前お会いしたことがありましたが偶然再会して、今、交際させていただいてます」

この場で梅子の名前を出すのがいいのか不安が迷ったが、いま相手の名前をちゃんと出さなければ、婚約が勝手にひとり歩きしそうで俺は正直に話した。
呆然と俺を見上げていた心奈が、大きな瞳をきゅっと細める。

「嘘っ!世界なんでよっ!その人、経理の先輩から聞いたけど、世界より随分年上じゃないっ!おばさんじゃないっ」

「俺は年なんて気にならない。だから梅子さんはおばさんじゃない。それに俺、まだ仕事一緒にさせてもらって間がないけど、梅子さんの仕事への取り組み方は見習うべきところがたくさんある。何よりこの会社の為にいつも一生懸命で、仕事に対してもいつだって真摯に向き合う姿勢を尊敬してる」

「何よそれっ!世界どうしちゃったの!今まで年上の女の人なんて見向きもしなかったくせにっ!」

「そうだよ。今まで恋愛対象はずっと年の近い子ばっかだったけど、今までの相手と梅子さんは違うから」

「世界いいかげんにしてっ」

もう一度俺の腕を掴みかけた心奈の手を俺は雑に振り払う。
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