タロくんとハナちゃん
指輪
太朗との同棲生活が慣れてきた頃━━━━━━


太朗は華子以外には、びっくりする程冷たい。
理一郎や俊彦達、太郎丸の仲間はまだいい方だが、彼等以外には冷淡だ。

「佐藤くん、ここ座っ━━━━━」
「ダメ」

「え?」
「え?って、ここに座りたいんでしょ?
だから、ダメ」

「そ、そっか…」


「相変わらずっすね……(笑)」
俊彦が、苦笑いしながら言う。

「ん?」

「ハナちゃん以外には、びっくりする程冷たいから」

「は?ダメなの?」
俊彦の言葉を聞いて、鋭く睨み付けた。

「……っ…そ、そんな怒んないでくださいよ!」

「……………
そんなことよりも、ハナちゃんに会いたい!」

「フフ…タロさんらしいな(笑)
でも、タロさん」
「ん?」

「怒んないで聞いてくださいよ?」
「何?」

「ほぼ四六時中、ハナちゃんと一緒にいて飽きないんすか?
同棲してて、大学も一緒で、取ってる講義もほぼ一緒。
たまには、一人になりたいとかないんすか?」

「ないよ」

「そうすか…(笑)」

「むしろ僕は、片時も離れたくない。
“ほぼ”じゃダメ。
“完全に”じゃないと!
じゃないと、僕は安心できない」


そう。
基本的に、太朗、華子、俊彦は同じ講義を取っている。
が、一限だけ、華子のみ取っている講義があるのだ。

まさに今、その講義中の華子。

太朗と俊彦は、学食で華子が講義を終えるのを待っていた。

そしてその華子の講義中は、太朗にとって地獄その物だ。

華子と離ればなれな上に、さっきのように太朗や俊彦と仲良くなろうと話しかけられたりされるから。


「━━━━あ!そうだ、タロさん」
「ん?」

「タロマルの指輪があるじゃないすか?」
「これ?」
太朗は、自分の親指を俊彦に見せる。

「はい。
ライオンの指輪を女達がしだしたみたいで。
もちろん、みんな形は違いますが……」
「は?」

「なんか、ライオンの指輪をすると“太郎丸の女になれる”って勝手な噂が流れてるみたいっす」

「何、その、くだらない噂」

「今、誰が噂流したか、比呂(ひろ)(太郎丸の仲間)が調べてます」

「ふーん。変なことするクズがいるんだね」



「━━━━━水羅(みら)ちゃん、それ…可愛いですね!」
華子は、隣に座る友人・冴草(さえぐさ) 水羅の薬指に光る可愛らしいライオンの指輪を見て言った。

「フフ…でしょ?
華子もすれば?
ライオンの指輪してたら、太郎丸の女って認識されるみたいよ?」

「あ、いえ。大丈夫です!」

水羅は、この講義で仲良くなった友人。
ずっと太朗や俊彦といるため、華子には友人と呼べる同性がいない。

一人でいた華子に声をかけてきてくれたのが、水羅だったのだ。
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