タロくんとハナちゃん
ソファに座り、太朗か優しく華子の左手を持ち上げる。
「剥がすね?」
ゆっくり剥がされた。

「………」

「ん?ハナちゃん、指輪は?
てか、怪我してないけど?」

「……こ、これは…」

「“正直に”教えて?」
意味深に太朗が見ている。

きっと、下手な嘘は逆に怒らせることになる。
華子は意を決して、太朗に向き直った。

「水羅ちゃんに、指輪を見せてほしいって言われて……」

「あー、あの女か…」

「………」
(あの女って……)

「それで?」

「今日だけ、貸してって言われたんです。
それで、断りきれなくて……」

「そう…
それで講義から戻ってきた時、様子がおかしかったんだね」

「え?あ、ご、ごめんなさい…」

「それならそうと、もっと早く正直に言ってくれれば良かったのに」

「はい。そうですよね……
でも、タロくんが傷つくと思って……」

「そうだね。
傷ついたなぁ、ハナちゃんに手を振り払われたこと」

「え?」

「指輪のことは、ハナちゃんのせいじゃないでしょ?
僕が嫌なのは、ハナちゃんに隠し事されてたことと拒否されたことだよ」

「タロくん…」

「“助けて”って言って?
もっと、頼ってよ!
もっともっと、甘えて?」
華子の頬を包み込み、顔を寄せる太朗。

「はい…/////」

そのまま二人は、口唇を重ねた。


その日の夜更け。
華子と抱き合い、ぐったりして眠ってしまった華子から静かに離れベランダに出た太朗。

煙草を吸いながら、スマホを操作していた。

「━━━━あ、比呂?」
『タロさん!お疲れ様です!』

「例の指輪の件、何処までわかってる?」

『すみません!
なかなか、掴めなくて……』

「ん?どうゆうこと?
比呂なら、簡単でしょ?」

『実体がないというか……』

「は?どうゆうこと?」

『それが━━━━━』



その頃の水羅━━━━━━

「━━━━出来た!!!
…………フフ…今回のは結構、上手く出来たかも!」

テーブルの上には、華子から借りた指輪とそれに似た指輪が並んでいた。

水羅はハンドメイドが趣味で、太朗と華子のペアリングを手作りし、自分も太朗と恋人気分をあじわっていた。

ライオンの指輪も、元々は水羅が作ったモノだ。


「今回は、バレないようにしなきゃ!」

水羅は、藤のデザインの指輪を大事そうにしまった。
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