麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。

◇香道教室に通いたい。



 体験教室を受けてから一週間経った。だが、今だに両親に伝えられずにいた。

 本当ならその日に伝えるつもりだったのに、今までのことも迷惑をかけているのに今度は教室に通いたいだなんてわがまま言えないなぁと思っていたらズルズルと一週間経ってしまった……


「はぁ〜どうしよう、ここまできたら、國宗先生も私のこと忘れてるんじゃないかな」


 そんなことをブツブツ言いながらも、答えが出るわけではなくて時間は過ぎていく。

 だけど、前までは瑠樹さんのことを思い出して泣いていたはずなのに今は、あの香りがかすかに残ってるんじゃないかと思うくらいに頭から離れない。
 婚約破棄をされて、心無い言葉に傷ついて虚しくて寂しかった。もう心踊るような、嬉しいとか楽しいとかそういう感情はもう味わえないんじゃないかと思ったりした。だけど、お香に触れて、聞いて、胸が高鳴った。

 私は香道教室のカリキュラムの内容や費用をみる。これなら、今まで働いて稼いできたお金でなんとかなりそうだ……よし。


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