また、星の下で君に会えたなら。~彦星の生まれ変わりは織姫女子を溺愛する~

だから結花は、その異世界に行くために部屋を出るとこにしたのだ。

いつも見慣れているはずなのに、暗くていつもより長いように感じる階段を降りてリビングの前を通り、玄関の前まで来る。

この時、結花に迷いはなかった。
こんな時間に外に出ていたら警察に補導されるのでは?とか、両親が起きて自分が居なかったら心配させちゃうとか、そんな迷いは無かったのだ。
ただただ吸い寄せられるように結花は、外へ出た。

そこからは、何処に行けばいいのか結花にはなんとなく分かっていた。
途中から何処を歩いているか結花にも分からなくなった。
しかし、足が動くのだ。
ひたすらに、足が止まらず歩いていく。

歩いていく道は全て裏道で大通りを通らない。
なので、人には全く会わない。
無音で結花は、まるで自分だけが世界に取り残されてしまったようにまで感じた。
街灯もないし、住宅にも電気がついていないため明かりは星々とつい2、3日前から満ち始めた月の仄かな柔らかいもののみだった。
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