【WEB版(書籍化)】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

1章:それでは皆様、ご機嫌よう――!

 純白の壁に金箔で装飾された、贅沢かつ広々とした舞踏ホール。
 
 煌びやかなシャンデリアの灯りが、真夜中の会場を昼間のように明るく照らしている。

 優雅なワルツの調べに乗って踊る男女。
 楽しげに談笑する貴族たち。

 
 今まさに宮廷舞踏会が開かれているホールのど真ん中で、男が高らかに宣言した。

 
「ビクトリア・フェネリー侯爵令嬢。貴殿との婚約を破棄する!」

 
 場内が一瞬にして静まり返った。

 人々の視線が、宣言した第二王子オスカーと、それを突きつけられた私――ビクトリアに集まる。

 突然、婚約破棄されたにもかかわらず、私はこの場にいる誰よりも冷静だった。
 
 
「かしこまりました」

 
 淡々と了承する私に、偉そうに胸を張っていたオスカーが一瞬たじろぐ。

 私が取り乱す姿を想像していたんだろうけど、おあいにく様。

 オスカーの浮気には気付いていたし、こんな政略結婚に未練はないのよ。

 国王陛下と父が決めた結婚に口出しできないから、今までずっと我慢していただけ。そっちから破棄してくれるのなら好都合。

 とはいえ、『はい、そうですか』と物分かりよく引き下がるのも癪だわ。
< 1 / 292 >

この作品をシェア

pagetop