【WEB版(書籍化)】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました
「恐れ入りますが、理由をお伺しても宜しいでしょうか?」

「ハッ、理由? よくもまぁ白々しい。お前のような冷血な女性は、王室には相応しくないからだよ」

「冷血……?」

「まだしらを切り通すつもりか? いいだろう! これまで貴様がエリザにしてきた血も涙もない悪行の数々を、ここで明らかにしてやろうではないか!」

 オスカーは先程までとは打って変わって、猫なで声で「おいで」と少女を手招いた。

 腕の中に飛び込んできたのは、ふわふわの髪に大きな目が愛らしい女性――宮廷侍女のエリザだ。

 侍女といっても、宮仕え出来るのは貴族の子女ばかり。
 エリザも下級貴族家出身のご令嬢だ。

 
「オスカー様……」

 
 エリザが不安そうな顔で上目遣いにオスカーを仰ぎ見る。

 男の庇護欲をかりたてる絶妙な仕草。キツい印象を与えがちな悪女顔の私には出来ない芸当だ。
 
 
「ほら、エリザ。怖がることはない。今までビクトリアにされてきたことを、正直に話しなさい」
< 2 / 292 >

この作品をシェア

pagetop