【完結】婚約破棄を望んだのに、なぜか愛で埋め尽くされそうです!


 そんな顔されたら、私は何も言い返せなくなるって、カオルはきっと分かっているのだろう。

「……それでいいの?カオルは」

「俺はいいって言ってるだろ?」

「私、好きな人がいるんだよ? ずっと、ずっと……その人のことが好きなんだよ?」

 私の好きな人は、姉の旦那さんだ。 姉から「私、この人と結婚するんだ」と紹介された人が、私の好きな人だった。
 私は姉に対して、心から「おめでとう」って言えなかった。複雑な気持ちを抱えていたからこそ、素直に喜べなかった。

 まさか私の好きな人が、姉の旦那さんになるなんて、思ってもなかった。
 私の思い人は、私ではなく姉を選んだのだから。叶わない恋だということに、この時初めて気付いた。

 胸の奥がズンと痛くて、張り裂けそうで、泣きそうになるのをずっと堪えていた。 悲しいってこういうことなんだ、これが恋なんだ。
 そう気付いた時にはもう、遅かった。私は叶わぬ恋に終止符を打つことも出来ない。

 姉は今、旦那さんと幸せに暮らしている。なんなら、姉は今妊娠している。
 旦那さんとの間に子供が出来て、より一層幸せになる。 

 なのに私は、あの人のことを忘れられない。
 そんな時、カオルと出会った。
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