【完結】婚約破棄を望んだのに、なぜか愛で埋め尽くされそうです!
カオルは私の友人からの紹介だった。カオルは初対面の私にも優しく接してくれた。
何回か会ううちに、私に好きな人がいると見抜いたかと思いきや、いきなり「じゃあさ、俺の恋人になるってのはどう?」と突拍子もない提案をしてきたのだ。
困惑する私に、カオルは「好きな男を忘れたいなら、俺と付き合えばいいんじゃない」と優しすぎる言葉を言ってくれたことを覚えている。
カオルは私に対して「俺は、ミクに好きな人がいても構わないよ。 いつか俺を好きになってくれるまで待つから」と言って、微笑んだんだ。
あの時の笑顔に、私は少し救われた気がしたのは事実だ。
だけど、そんなのはカオルを利用しているに過ぎないって感じて、怖くなったんだ。
私は自分のためにカオルを利用している。カオルを利用して幸せになろうとしている。
それがあまりにも惨めで、情けなくなった。
「ミク、言っただろ? 俺をとことん利用すればいいって」
「そんなの……ダメだよ」
でもカオルは、「ダメなんかじゃない。俺を利用して幸せになればいいんだよ、お前は」と慰めの言葉を掛けてくれる。
「……ミク、俺はお前を愛してるんだ」
「でも……」
私は……ずるい。