僕の欲しい君の薬指



「月弓はこの後授業あんの?」

「本当は午後に一コマだけあったんですけど、たった今教授の都合で休みになりました」

「お、ラッキー。なら俺とこのままデートしよう」

「え?」

「駄目?」



腰を曲げて私の顔を覗き込む榛名さんに迫られて回答に困る。


こんな風に云うと語弊があるかもしれないけれど、榛名さんは狡い…と思う。強引な一面と優しい一面を兼ね備えているし、冷たそうに見える第一印象とは裏腹にとても気さくだし、何よりふとした瞬間にこうして甘い顔を見せてくる。



「もっと月弓と一緒にいたい。」



追い打ちをかける甘い台詞に、心がグラグラと揺れ動く。

だけど今日は天糸君がお仕事から帰って来る日だ。「お出迎えして欲しい」彼のその可愛い我が儘が私の頭に過って、榛名さんに返事をするのを躊躇わせる。


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