僕の欲しい君の薬指
脳味噌が、心臓が、身体が、全てが、天糸君の狂気に染められていく感覚がした。
「5分44秒。ここ最近では一番長く月弓ちゃんと目が合ったね。嬉しい」
「……」
「ふふふっ」
「ど、どうしてそんなに愉しそうなの?」
「愉しいんじゃなくて、どうしようもなく幸せなの」
「何…が?何が幸せなの?」
「だってもう少しで、月弓ちゃんが溺れてくれるんだもん」
何を数えているのだろうか。指を一本ずつ折る天糸君の唇がゆるりゆるりと緩んでいく。ずっと私と視線が絡んでいた時間を計測していた事にもゾッとして変な汗が首筋を伝う。
「そんな事より月弓ちゃん、また僕から逃げようとしてない?」
「え?」
「さっき、僕と目も合わせず誰の事を考えていたのかまだ答え聞いていないよ?」
「…っっ」
「ほら、早く教えてよ。誰の事を考えていたの?」
“月弓ちゃんが教えてくれないと、僕がそいつを殺せないじゃない”
頬を挟む様に片手で掴んで私の顔を固定した彼が無理矢理視線を奪う。もう一方の手がワンピースの裾を平然と捲り、少し汗ばんでいる私の太腿を這った。