僕の欲しい君の薬指



神様も、この世の中も、全部が意地悪だ。


よりにもよってこんな時に、私でも知り得なかった彼の一番美しい表情を見せるだなんて意地悪だ。彼のこんなにも愛らしい貌を見てしまうと、蓋をしていた感情に蕾がついてしまうじゃない。


隠し通そうとしていたこの感情が花開いてしまうじゃない。



「…っ、月弓ちゃんが僕を放したくないって云ってるみたいに吸い付いてくる。可愛い。愛おしい。幸せ」



彼が嘘偽りなく心の底から幸福に満ち満ちた笑みを咲かせるから、胸の奥がこれでもかと締め付けられて、瞬く間に酸素が吸えなくなる。

もう認めるしかないのだろう。私はこの子に対してずっと抱えていたこのやましい感情と向き合わなくてはいけないのだろう。



「僕ね、月弓ちゃんの傍に生まれてこれてとっても幸せ。独占できて、ドロドロに愛する事ができて、本当に幸せなの」

「…ふぁっ」

「でもね、たった今、僕の幸せの絶頂が更新されたよ」

「あま…と…君」

「僕は、月弓ちゃんが息絶えるその時まで永遠に愛してるよ。そして息絶えた後も愛すと誓うよ。だから、そろそろもう……」



ねぇ、天糸君、私の負けだよ。私ね…私ね……。


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