僕の欲しい君の薬指



ソファに腰掛けてすらりと伸びている惚れ惚れしていまいそうな脚を組んだ妃良さんは、試験勉強どころではなくなった私達を見下ろした。


決して強要された訳ではないのに、無意識に正座してしまっている自分がいる。その理由は、背凭れに身体を預ける事なく背筋をピンと伸ばしている妃良さんから流れ出ている雰囲気に気圧されているからだ。



こんな例えをするのは失礼かもしれないが、女王様の様だった。

なんて美しい人なのだろう。会うのは初めてじゃないはずなのに、そう思う。きっとこれから先も私はこの人に会う度に、美しい人だなと思うのだろう。



「……また会う気がするとは言ったけれど、まさかこんなにも早くまた会えるとはね。月弓ちゃん」



腕を組んだ相手から投下された一言に私も激しく同感した。


彼が首を傾けるのに合わせてサラリと流れていく群青色の髪。一本一本が念入りに丁寧に手入れされているみたいに艶があって綺麗だ。所作の一つ一つがどれも抜かりなく美しい相手に見惚れながら、私にはどう足掻いても真似できないだろうなと覚る。


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