僕の欲しい君の薬指
今更こんな大切な事実に気付く私は、救いようのない阿保だ。愚かっぷりには呆れるばかりだ。何の取り柄もないこんな私を狂うまでに愛してくれたあの子ですら、ここまで鈍くて頭の悪い私を見ると愛想を尽かしてしまうだろう。
離れると決めたのに。天糸君の将来の為に身を引くと決めたのに。やっぱり寂しいよ。息苦しさに満ち満ちている天糸君の愛がなくなってしまうなんて、どうしようもなく恐いよ。
ごめんね、天糸君。年上なのに馬鹿で愚図で頼りなくてごめんなさい。天糸君が倒れて身体が辛いこの瞬間、傍に駆け寄ってあげられなくてごめんなさい。そして、貴方から離れても、貴方の傍にいても、息苦しさを感じてしまう我儘な私でごめんなさい。
でも、どうせ息苦しいのなら…天糸君の傍に居れば良かったな。素直になって、背徳感も罪悪感も死ぬまで背負う覚悟を決めて、「私も天糸君が好きだよ、愛してるよ」って伝えておけば良かったな。
天糸君はあんなに沢山私に「愛してる」を伝えてくれたのに。例えその形が歪だったとしても、いつだって自分の感情に正直に狂気に染まった愛を注いでくれたのに。私は何も、お返しができていないね。
本当に、つくづく駄目なお姉さんだね。
正に今、珠々さんに犯されそうになっていると云うのに、やけに思考は冷静だった。そしてこの期に及んで私の頭や心を浸蝕しているのは、麗しくて愛おしい従弟の事ばかりだった。