僕の欲しい君の薬指

。。。15



私のマンションの前に横付けされている高級車。運転席から手を振っている彼の存在にその辺を通りかかった人が気付いたらどうしようと思うと心臓がバクバク鳴っている。

サングラスで目元は隠れているもののオーラがずば抜けて輝いているその人が車から降りれば、大学ではお目に掛かれないサラサラの銀髪がひと際目を惹く。


どうして私はついこの間まで榛名さんがApisのメンバーだと気づかなかったのだろうか。全くピンとも来なかった自分の鈍さにつくづく辟易する。



「荷物、これだけ?」

「はい」

「俺が運ぶの手伝うって言ってたのに、全部月弓が運ぶなんて見せ場がないな」



苦笑いを滲ませて私の手からキャリーケースと大きなバッグを軽々と取った相手が、トランクを開けてあっという間にそれ等を詰め込んでしまう。



「榛名さんに荷物を運ばせるのは流石に申し訳なくて…」

「何で?頼ってよ。俺、月弓にだったら頼られんのも嬉しいし」



正面から手が伸ばされ、くしゃくしゃと私の頭を撫でる。その手の温もりと榛名さんの甘い台詞に頬が熱を帯びていく。


< 197 / 305 >

この作品をシェア

pagetop