僕の欲しい君の薬指
「いつまで浮気するつもりなの、月弓ちゃん」
「浮気なんてしてないよ」
「してるよ。他の男見てるじゃん」
「違うよ、羽生 天君を見てたんだよ」
「ふーん」
「綺麗だなって、思ってたの」
「それでも僕は嫌なの」
スルリと彼が私の頬に頬を寄せた。熱を持っている私の頬にはシャワー上りで冷えている彼の体温が丁度心地良かった。だけどふと我に返って、こんな距離感はやはり間違っていると理性が叫ぶ。
急いで相手を振り払おうとしたけれど私の思考は全て見透かされてしまっているらしく、容易に両腕の自由を奪われた。それから僅かに間を置いて「羽生 天なんて、見なくて良いよ」と天糸君が声を落とす。
冷えた指が私の頬を挟む。彼の意思の赴くままに、私の顔が動かされ、有無を言わさず切り替わった視界に映り込んだのは、画面越しに歓声とスポットライトを浴びていていた羽生 天君と全く同じ麗しい貌だった。
ブロンドに近い髪は、生で見ると尚の事美しい。深い翠色の双眸も、透き通っていて硝子細工みたいだ。
「テレビの中の羽生 天なんて見ないで、本物を見てよ月弓ちゃん」
“羽生 天なんて所詮、僕の仮の姿なんだから”