僕の欲しい君の薬指


翡翠色の双眸に映し出される自分の顔は匙を掴んだまま蒼ざめている。そんな私を蕩けた貌で恍惚と眺める彼がケラケラ嗤っている。



「意地悪だなんて、嘘を吐いて僕を捨てて平然と大学生活を始めようとした月弓ちゃんにだけは云われたくないよ」

「…っ…」

「ねぇ、どっちが意地悪だと思う?もう一度よーーーく考えてみてよ月弓ちゃん」



嗚呼、私はやっぱり愚図で頭が悪い。彼の憤りは治まってくれたのだと勝手に決めつけてしまっていた。

そうだ、逃亡を謀った私を天糸君が忘れてくれるはずなんてないんだ。だってこの子は…この子は……。



「次僕に意地悪したら、絶対に許してあげない。そうだなぁ、月弓ちゃんを監禁するのも悪くないかもしれないね」

「……」

「そうやって僕を怖がらないでよ、可愛い月弓ちゃん」

「……」

「これじゃあまるで、僕が月弓ちゃんを虐めているみたいじゃない」



この子は、歪な愛情で私の首を絞め付けて、緩やかに緩やかに私から酸素を奪う狂気を持った、美しい愉快犯だ。



「僕はただ、月弓ちゃんを愛しているだけだもん」



吊り上がった血色の良い唇を割いた舌で私の唇に触れさせていたフォークを舐めた天糸君は、それはそれは幸せそうな表情を浮かべていた。



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