『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
翌日の日曜日。
響さんとの間にある空気は今までに無いほどに甘く感じられるのに、どうやって接していいのか分からなくてぎこちない態度を取ってしまう。
「芽依?」
「っ……、はいっ」
「そんな緊張しなくても」
「っ……」
そんなこと言われたって、パーソナルスペースが近すぎるんだってばっ!
六人掛けの大きなソファーセットなのに、なんで私のすぐ隣に座るの?
端に座ったはずなのに、彼も端に来なくたっていいのに~~。
「少しずつでいいから、俺に慣れて」
「……はい」
甘い、……甘すぎる。
バッグハグの破壊力が凄まじい。
「あぁ~~行きたくねぇ~~っ」
「……私も同席しましょうか?」
「あ、それはいい。ってか、むしろ来ちゃダメ」
「何でですか?……秘書なんですから、打ち合わせ兼ねた会食に同席してても平気ですよね?」
「持田社長、芽依のことお気に入りだから、絶対お酌させてお触りする気満々なはずだ」
「……っ……フフッ」
「何がおかしいんだよ」
「それって、ヤキモチですよね?」
「は?……ってか、当たり前だろっ。やっと手に入ったのに、他の男に触られるとか考えたくもねぇ」
「っ……」
「さっさと終わりにして帰って来るから」
「夕ご飯、何食べたいですか?」
「芽依が作ってくれるものなら、何でも」
「響さんの嫌いなお好み焼きでも?」
「え?……俺、お好み焼き、嫌いじゃないよ?」
「えっ?そうなんですか?」
「ん、むしろ好きな部類だけど」
「え?……えぇ~っ?!」
「あ、前に取引先の接待で鉄板屋さんに行った時に食べた、貝類が入ってたやつで当たったから、それ以降暫く避けてただけだよ」
「……なんだ、そうだったんですね」