『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
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週明けの月曜日。
土曜日のクリスマスに急展開になり、遂に彼と公私ともにパートナー?の関係にまで発展した。
とはいえ、会社ではあくまでも副社長と秘書。
それ以上でも、それ以下でもない。
実際に両想いだと確認し合っても、何も変わらない。
婚約したわけでもないし、親の許可が出たわけでもない。
両家が業界のトップとも言われる大会社だという事実も変わらないし、ライバル関係なのも周知の事実。
だから、想いを伝えあったところで、何かが大きく変わるとは思っていない。
「如月さん、一月の予定の確認をしたいんだけど」
「はい」
専務秘書の岡本 由紀子さん(三十三歳)に声を掛けられ、秘書執務室へと。
月末になると、翌月のスケジュールを大まかに把握する作業がある。
特に副社長と専務、常務といった重役のスケジュールは重要で、接待で被る日も出てくる。
ポスト的には私の方が上役付きの秘書だけれど、秘書課勤務で言ったら、岡本さんの方が何年も先輩だ。
二月上旬くらいまでのスケジュールを確認し、必要な書類を纏めていると。
「如月さんって、副社長と付き合ってるの?」
「………へ?」
「私見たのよね、クリスマスの日に新宿駅の改札口で待ち合わせてるあなたたちを」
「っ……」
「それだけじゃないわ。……いつだったかしら?先月の終り頃だったと思うけど、副社長の自家用車で、休日にデートしてたんじゃなくて?」
「………」
「別にだからって何?って話なんだけど、気を付けた方がいいわよ?副社長を狙ってる子は腐るほどいるから。それもかなり熱狂的な……ね」
岡本さんの目は笑ってない。
私を牽制するような態度では無いけれど、明らかに忠告だと分かる。