『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす



「フゥ~~ッ……もう飲めない」

大ジョッキ一杯、中ジョッキ二杯をハイペースで流し込んだ体は、思った以上に重い。

一先ず、選定会のような見合い?のようなものは、乗り切ったけれど。
シックな曲が流れるラウンジには居座れない。

歩かなきゃ……。

お会計は丸川さんが済ませてくれていたようで、そのままロビーからエントランスへと向かおうとした、その時。

「お疲れ様」
「っ?!……副社長っ?!どう……されたのですか?」
「迎えに来た」
「……もしかして、後をつけてたんですか?」
「俺じゃないけどな」
「………」
「歩けるか?」
「……はい」

ふらつく足、ゆらゆらと歪む視界。
意識ははっきりとあるのに、体が重くて思うように動かない。

「んっ?!!」
「じっとしてろ」
「あ、いや、副社長っ……」
「いいから黙ってろ」

腕を支えるようにして持ってくれたと思ったら、その私の腕が彼の首へと回され、私の体は宙に浮いた。
……お姫様抱っこ。

恥ずかしい。
周りの視線が一気に向けられる。

少し前だってありえない行動を散々して、冷視線を浴びまくりだったのに。
その時の恥ずかしさとは別物。

あれは完全になりきっていたから、恥ずかしい=安心、のようなものだったけれど。
今は完全にたじたじの恥ずかしさだ。

「井上、如月の自宅まで」
「承知しました」

待機していた井上さんの車に乗せられ、車は静かにホテルを後にした。

井上さんにまで醜態を晒してしまった。
月曜日からどんな顔して出社したらいいのだろう?

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