『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「次、どこ行こうか」
マップが書かれたパンフレットを広げ、昼食までの時間を過ごす順序を決めようと。
「ここのアドベンチャーっての、面白そうだな」
「行ってみますか?」
「うん」
再び彼女の手を取り、アクティビティスポットへと向かう。
彼女から『響さん』と呼ばれるようになったとしても、敬語はまだ外れないらしい。
まぁ、直ぐには無理なのは分かってる。
けれど、この垣根を取り壊さないことには、俺らの距離が開いたままだ。
最初は握る手を振り払おうとしていた彼女だが、少しずつ慣れて来たのか。
握り返すまではいかなくても、嫌がる素振りは見せなくなった。
「えっ……バンジー?」
「おっ、ホントだ」
「ファームジップというやつなら何とかいけそうですけど、バンジーは無理ですっ!」
「フフッ、めっちゃ顔強張ってる」
「だって……」
「いいよ、無理しなくて」
「良かったぁ~」
「俺は飛んでくるけど」
「え?……ふ、……響さん、バンジーするんですか?」
「うん、面白そうじゃん」
「………下で見守ってます」
「フフッ、そうして。ちょっと出来るか、聞いて来る」
ワイヤーロープに吊るされ滑り降りるファームジップというアクティビティと、高さ二十一メートルのバンジージャンプ。
どちらも定員があり、予約制だ。
「時間がちょうど良くて、十時からのですぐ飛べるらしい」
「そうなんですか?」
「で、十時半からのファームジップの予約も入れて来たから、俺が飛び終わったらジップの方に行こう」
「はいっ」
「んじゃあ、ちょっと行って来るな」
「はぁ~い、頑張って下さいっ!」
「おぅ」