『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「物凄くスピードが出て、怖かったです~~っ」
「よく頑張ったな」
ファームジップを滑り終え、ほんの少し震え気味の足で散策を再開する。
高い所が苦手なわけではないし、絶叫系のアトラクションが苦手というわけでもない。
大学卒業以来、こういった類のアトラクションをしたのは久しぶりだったため、かなり緊張した。
「もう少ししたら、早めの昼食にしようか。日曜だし親子連れ多いから混みそうだよな」
「そうですね」
*
「ジンギスカンは大丈夫?」
「あ、はい、食べれます」
「せっかくだし、ジンギスカンにしようか」
「はい」
牧場名物のジンギスカンを注文し、昼食はそれにした。
風も無く、ぽかぽかとした陽気の中、普段は見れない彼の素顔が垣間見れる。
「副……響さんっ、私が焼きますよっ」
「いいよ、プライベートで来てるんだから、俺に気を遣わなくて」
「ですが……」
「乗せるだけだし」
「っ……はい」
行動派というのか。
彼はアクションを起こすのが早い。
気付いた時には彼が何でもしてくれている。
さっきのファームジップの予約だってそうだ。
バンジーをしに行った際に、手際よくジップの予約も入れておいてくれた彼。
こういうさりげない行動が、女性の心を鷲掴みにするのだろう。
「えっ、……大丈夫ですよ」
「冷えたら大変だから」
「っ……」
脱いだコートが膝の上に掛けられた。
もう、こんな風に優しくされたら勘違いしてしまいそうだ。