『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

「物凄くスピードが出て、怖かったです~~っ」
「よく頑張ったな」

ファームジップを滑り終え、ほんの少し震え気味の足で散策を再開する。

高い所が苦手なわけではないし、絶叫系のアトラクションが苦手というわけでもない。
大学卒業以来、こういった類のアトラクションをしたのは久しぶりだったため、かなり緊張した。

「もう少ししたら、早めの昼食にしようか。日曜だし親子連れ多いから混みそうだよな」
「そうですね」



「ジンギスカンは大丈夫?」
「あ、はい、食べれます」
「せっかくだし、ジンギスカンにしようか」
「はい」

牧場名物のジンギスカンを注文し、昼食はそれにした。

風も無く、ぽかぽかとした陽気の中、普段は見れない彼の素顔が垣間見れる。

「副……響さんっ、私が焼きますよっ」
「いいよ、プライベートで来てるんだから、俺に気を遣わなくて」
「ですが……」
「乗せるだけだし」
「っ……はい」

行動派というのか。
彼はアクションを起こすのが早い。
気付いた時には彼が何でもしてくれている。

さっきのファームジップの予約だってそうだ。
バンジーをしに行った際に、手際よくジップの予約も入れておいてくれた彼。
こういうさりげない行動が、女性の心を鷲掴みにするのだろう。

「えっ、……大丈夫ですよ」
「冷えたら大変だから」
「っ……」

脱いだコートが膝の上に掛けられた。
もう、こんな風に優しくされたら勘違いしてしまいそうだ。

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