『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「柔らかくて旨かったな」
「はい、美味しかったです」
「食べる前に飛んでおいて正解だったな」
「へ?……あ、バンジーですか?」
「ん。お腹いっぱいの状態で山上ってバンジー……さすがに無理だろ」
「フフッ、……そうですね」
レストランに親子連れが多くなって来たこともあり、私達はレストランを後にした。
「この後、どうする?」
「味覚狩りってのがありますよ?」
「おっ、それいいな。今の時期だと?」
「……キウイフルーツみたいです」
「よーし、それ行こう!」
再び握られる手。
大きくて温かい。
「寒くないか?」
「はい、大丈夫です」
肩を並べて歩きながら、優しい声音が降って来る。
私のことを心配して、声をかけてくれる彼。
周りの親子連れのママさん方の視線が彼に向けられているのは明らか。
既婚者でもやっぱり目の保養は必須らしい。
私に向けられる子供っぽい無邪気な笑顔はハンパないほどの破壊力だ。
思わず胸の奥がキュッと締め付けられる。
*
「へぇ~、キウイって結構種類があるんだな」
「そうみたいですね。私も今初めて知りました」
数種類あるキウイを収穫する。
「わっ……」
「足下気を付けろ」
「……すみません」
「謝らなくていいから」
「……はい」
少し窪んだ地面に足を取られ、体勢を崩した私の体を彼が支えてくれた。
「私が持ちますっ!」
「いいよ、こういうのは彼氏の役目だから」
「っ……」
収穫した沢山のキウイフルーツが入った袋を彼が軽々と持ってくれた。
“彼氏”というワードに、無意識に反応してしまう。
周りから見たら、うちらは恋人に……見えるよね?