『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

十二月上旬の土曜日。
九時過ぎに自宅を後にし、ガソリンスタンドに寄って給油してから彼女の自宅へと。

ドア横に凭れて、五分ほど早くに到着した俺は時間を調整する。

「おはよう」
「おはようございます」

オフホワイトのニットに黒いボトムスに薄いグレーのロングコート姿で出迎える芽依。

「今日はブーツでも平気でしょうか?」
「ん」

ショートブーツを履き終えた彼女が、俺へと視線を向けて来た。
そんな彼女のニットの襟に指先を伸ばし、確認する。

「わざわざ隠さなくてもいいだろ」
「っ……」

ニットの中にネックレスを隠すようにしまってあった。
それをあからさまに外に出すように引き出す。

「そろそろ行こうか」
「……はい」

彼女の手を掴んで歩き出す。
振り払われるわけではないけれど、握り返しても貰えない。
周りには手を繋いで歩いている風に見えるだろうが、実際は俺が掴んで連れ歩いているだけ。

せめて、そっと握り返してくれたら……。

車でとある場所へと向かう。

「今日はどこへ行くんですか?」
「今日は遠出はしないよ」
「……そうなんですね」
「ご両親って、土日何してる?」
「両親ですか?接待ゴルフとかなければ、自宅にいる率高いかと思いますけど、近場の温泉に行くこともありますね」
「へぇ~」

同世代の親でも結構違うもんだな。
うちは片親だから、余計にそう思うのかもしれないけれど。

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